オーラルケアを美容に変える SNSデータが捉えた潜在ニーズは、 いかに市場を創り出したか | 株式会社MUSCAT GROUP
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#新興ブランドの拡大

オーラルケアを美容に変える
SNSデータが捉えた潜在ニーズは、
いかに市場を創り出したか

Introduction

若年層に最適化した価値設計と開発により、新たな市場を創出したオーラル美容ブランド『MiiS』。SNS上の行動データから言語化されていなかったニーズを捉え、「オーラルケア」を美容として再定義した。データ起点の意思決定が、いかにしてブランドと市場を生んだのか。

Project Member

  • 荻原 萌々佳

    株式会社WinC 代表取締役
    株式会社MUSCAT GROUP 執行役員

オーラルケアという日常的な商材に「美容」という新たな価値を付与し、若年層を中心に支持を集めている、オーラル美容ブランドがある。MUSCAT GROUPの1社である、株式会社WinCが運営する『MiiS(ミーズ)』だ。

2021年7月のブランド立ち上げ以来、『MiiS』はスキンケアやコスメを選ぶような高揚感を口元のケアにもたらすことをコンセプトに掲げ、歯のホワイトニングジェル『薬用 ホワイティエッセンス(以下、ホワイティエッセンス)』や、口腔ケアタブレット『mm flora*(エムエムフローラ)』などのヒット商品を世に送り出している。

『MiiS』を立ち上げ、現在はWinCの代表取締役としてこのブランドを牽引するのが、荻原萌々佳だ。2018年にインターンとして入社した荻原は、メディア事業の経験を経て、未経験ながらプロダクト開発に着手。「ユーザーが誰かに語りたくなるもの」を突き詰める姿勢と、トレンドを敏感に察知し即座に実行に移すスピード感で、『MiiS』を急成長させてきた。

本記事では、「オーラル美容」という市場を拓き、プロダクトを形にしていったその知られざる開発秘話に迫る。

メディア運営の中で見出したインサイトと、自社プロダクトの可能性

まずは、『MiiS』を立ち上げるに至った経緯について教えてください。

『MiiS』はメディア運営を通じて得た、さまざまな方々の声から生まれたブランドです。

 

私たちは元々、『MiiLabo(ミーラボ)』という美容Instagramメディアを運営しており、私もこのメディアの一担当者として、クライアントから依頼いただいた商品のPRなどを手掛けていました。この事業は順調に成長していたのですが、同時に事業の限界も感じるようになったんです。

 

そうした状況の中で、より会社の成長に貢献するために「メディアを起点にして、自社でサービスや商品を生み出すことができるのではないか」と考え始めたのが、『MiiS』立ち上げのきっかけです。当時はD2Cブームのただ中でもありましたし、『MiiLabo』チームの中からも「メディアで培った知見をプロダクトづくりに活かせるのではないか」という声が挙がっていました。

数ある商材の中で、なぜ「オーラルケア」に着目したのでしょうか?

運営を担当していた 『MiiLabo(ミーラボ)』は、スキンケア系の製品のレビューを中心とした美容メディアなのですが、当時はちょうどコロナ禍で、マスク生活が当たり前になっていた時期でした。その中で投稿のデータを分析していると、ある傾向が明らかになりました。それは、オーラルケアに関する投稿への反応が非常によいということ。

 

Instagram上での反応は、大きく「いいね」と「コメント」、そして「保存」に分けられます。「コメント」をしたり、「いいね」をしたりすると、フォロワーに自分のアクションが伝わりますよね。一方で、「保存」は自分が投稿を見返すための機能で、保存したことはフォロワーに知られません。オーラルケアに関する投稿は、この「保存数」が圧倒的に多かったんです。

「コメント」や「いいね」よりも、「保存」が多いという事実に、ユーザーの隠れた心理を見出したわけですね。

そういうことです。「人にはあまり言えないけれど、実は口元の悩みを抱えている」。そんなインサイトを発見したことが、オーラルケア領域への参入の決め手になったんです。

 

ただ、既存の製品と似たものをつくるのでは私たちがやる意味がありません。美容メディアを運営している強みを活かし、スキンケアやコスメを選ぶ時のような「ときめき」をオーラルケアにも持ち込みたいと考えました。そこで、「オーラルケア×美容」=「オーラル美容」というコンセプトを掲げ、ブランドを展開することにしたのです。

フォロワーとの不断のコミュニケーションと検証が、熱狂を生み出す

実際の製品づくりはどのように進められたのでしょうか?

私と『MiiLabo』の編集長、そしてメンバー数名でプロジェクトをスタートさせたのですが、誰もオーラルケア製品はおろか、プロダクトをつくった経験がなかったので、何から始めればいいのかすらわからない状態でした。

 

とにかく手探りでしたね。市販されているさまざまな歯磨き粉の裏面を見て、製造販売元の会社名を調べ、片っ端から電話をかけました。「こんなコンセプトの商品をつくりたいと考えているのですが、どうすればいいですか?」と、直接問い合わせるところから始めました。

『MiiS』の第一弾製品として発売したのが、ホワイトニングジェル『ホワイティエッセンス』ですよね。どのような商品で、なぜこの商品を第一弾に選んだのでしょうか。

この商品を一言で表すなら「歯の美容液」です。当時、市場にはすでに歯の美容液というカテゴリは存在していましたが、その多くはどちらかというと、ご高齢の方々をターゲットとした製品で、私たちがターゲットとするような若い世代向けの商品は、市場に全くなかったんです。しかし、メディア運営を通して、若年層にも歯の美容液に対するニーズがあることはわかっていました。そこで、私たちは歯の美容液を『MiiS』の第一弾製品としてリリースすることを決めたんです。

 

若年層をターゲットにする以上、欠かせないのは「SNSで紹介されること」。新しいコスメを買った時や、新しい服を着た時に感じるワクワク感を、オーラルケア製品からも感じてもらいたい。洗面所に置いてあるだけで気分が上がるような、あるいは思わず写真に撮って誰かに見せたくなるような製品を目指して、製品の設計を進めました。

製品化するにあたって、特に苦労された点はありますか?

一番大変だったのは、やはりチーム全員が「納得のいく品質」を実現することでした。私たちは「フォロワーさんと共に製品をつくりあげる」という信念を持っていて、これは『MiiS』立ち上げ当初から変わっていません。

 

ですから、『ホワイティエッセンス』の開発においても、試作品ができるたびに『MiiLabo』のフォロワーさんに片っ端からDMを送って、N=1インタビューやモニター協力を依頼し、モニターになってくれた方には、1週間ごとに歯の色の変化を写真に撮っていただき、フィードバックと共に送ってもらいました。そしてフィードバックを元に、改良をする。この繰り返しでした。

 

もちろん途中でお返事が来なくなることもありましたが、最終的には21名の方に最後までモニターとしてご協力いただき、その方々が最初の顧客になったんです。

具体的には、どのような点にこだわりましたか?

たとえば、『ホワイティエッセンス』はスポイトで吸い上げるのですが、ジェルの粘度が硬すぎるとスポイトから出てこないし、逆に緩すぎると歯ブラシの上からこぼれ落ちてしまう。また、歯磨き粉に重ねて使用してもらうことも想定していたので、歯磨き粉の味を邪魔しないようなテイストにする必要もありました。粘度とテイストの調整だけでも、数え切れないほどの試行錯誤を繰り返しましたね。

フォロワーのみなさんと共に、製品をつくり上げていったわけですね。

製品そのものだけでなく、ユーザーインサイトの収集も徹底しました。SNSを通してアンケートフォームをお送りし、「オーラルケアに関する悩みは何か」「マスクを外す際、どのようなことが気になるか」といったマインド面まで詳細にヒアリングしました。

 

また、日頃からDMやコメントには必ず返信し、定期的にプレゼントキャンペーンを行うなど、地道なコミュニケーションを積み重ねて信頼関係を構築。その結果が、先ほど述べたように、長期間にわたって丁寧なフィードバックを送り続けてくれるフォロワーさんの獲得につながったのだと思っています。

リリース後の反響はいかがでしたか?

おかげさまで、リリース直後から予想以上の反響をいただきました。開発段階から試作品をインフルエンサーの方にお送りするなどして、発売前から認知を拡大するための種まきをしていたことも功を奏したと思っています。

 

初回生産分はすぐに完売し、3ヶ月ほど販売できない期間ができてしまったのですが、その期間さえも期待感を高める要素になったかもしれません。「『MiiS』はこういうブランドなんだ」というストーリーが、インフルエンサーの方々やフォロワーさんにしっかりと伝わり、「友達に話したくなるブランド」になれたことが、初期の拡散につながったのだと思います。

バズの秘訣は、商品企画とマーケティングの一貫性にあり

現在は『ホワイティエッセンス』以外にも商品を展開されていますが、ブランドとしてどのような目標を持って事業を推進していますか。

最終的な目標は、「オーラル美容のフラッグシップブランドになること」です。

 

この目標を達成するために、現在はどの販売チャネルに注力すべきかを見定めていて、各販売チャネルに最適化した製品を開発しています。

 

たとえば、『mm flora*(エムエムフローラ)』という口腔ケアタブレットは、明確に「Amazonのオーラルケアカテゴリで1位を取る」ことを目標に開発しました。Amazonのようなモールで勝つためには、フォロワーさんたちの声に耳を傾けると同時に、既存の売れ筋の商品を分析し、その上位互換をつくることが大切だと考えています。つまり、ただ「ニーズを汲み取る」だけではなく、競合商品の価格やデザイン、機能を上回らなければならないと考えていました。

とはいえ、「いいもの」であれば売れるわけでもないですよね。

そうですね。製品の質だけではなく、もちろんマーケティングも重要です。『mm flora*』のマーケティングにおいては、インフルエンサーさんにPRを依頼し、SNSでバズを起こしました。

 

シンプルなことですが、私たちは商品企画の段階でマーケティングプラン、すなわちどのインフルエンサーさんにPRしてもらうかについて、明確なアイディアを持っています。だからこそ、『mm flora*』のマーケティングにおいても商品の見せ方をうまく設計できたと感じています。

 

また、2025年8月に発売したマウスウォッシュ『mm flora*Bubble(エムエムフローラバブル)』は、卸での売上をつくることを目的にしています。どのチャネルでどの商品が最もパフォーマンスを発揮するのか、実験的な試行錯誤を繰り返しながら最適解を探っています。

5年で200億、そして世界へ。ニッチを超えたビッグブランドへの挑戦

プロダクト開発とマーケティングのシナジーが、『MiiS』の成長を牽引しているわけですね。

そうですね。さらに言えば、『MiiS』が伸び続けている理由は、時代のトレンドやプラットフォームのアルゴリズムの変化に合わせて、柔軟に戦い方を変えているからだと思います。PRの手法は数ヶ月単位で変わります。

 

時には他業界のブランド運営の方々と情報交換しながら、新鮮な手法を取り入れて実践する。もちろん日々の愚直な積み重ねも大切ですが、それ以上に「山をつくる」ための仕掛けを、スピード感を持って実行できることが、私たちの強みだと思っています。

最後に、今後の展望について教えてください。

私たちはこれまで、「ニッチなニーズ」をくみ取ってブランドを立ち上げてきました。しかし、だからといって「『ニッチなブランド』を目指している」わけではありません。これからは、より規模の大きなブランドを生み出していきたいと考えています。

 

その第一歩として、まずは『MiiS』をより大きく成長させるため、『MiiS』を単なるオーラルケアブランドではなく、世界中の人々の美容意識を変えるような存在へと育てていきたいですね。

 

『MiiS』以外でも大きなブランドをつくるための挑戦をしていて、別プロジェクトでは、5年以内に売上200億円規模を目指し、海外展開にも挑みたいと考えています。